『もしも家族が認知症になったら・・・』
『これってもしかして認知症じゃないのか?』
『今から出来る認知症対策はあるの?』
そもそも認知症ってどんな病気で、家族や周りはどのように接すればいいのでしょう?
他人事ではなく、歳をとれば誰にでも起こりうる身近な病気です。
事前に知っておき、今から出来る認知症の対策を取り入れてみてください。
認知症ってどんな病気で症状は?
内閣府が発表している平成29年度高齢者白書に65歳以上の認知症患者数と将来の推定が記載されています。
そこには、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、2025年には700万人で65歳以上の高齢者の約5人に1人になるとの推計となっています。
これは医療機関を受診して認知症と診断された人数ですから、実際の患者数はさらに大きくなると考えられます。
さらに世界に目を向けてみると、WHO(世界保健機関)によると2015年の認知症有病者数が5000万人、さらに毎年1000万人近くが新たに認知症になるとの報告があり、世界的に見ても大きな問題となっています。
まず認知症について、アルツハイマー病との関係も含めて確認しておきたいと思います。
『認知症』は病名ではなく、認識・記憶・判断といった力が劣り、社会生活に支障をきたす状態のことを言います。その状態を引き起こす原因の一つがアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)です。日本では、このアルツハイマー病が認知症を引き起こす原因のうち最も多い疾患と言われています。アルツハイマー病が約6割で、それ以外の原因疾患は血管系認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
アルツハイマー病は、脳神経細胞の減少、記憶を司る海馬を中心に脳全体が萎縮、脳に「老人斑」というシミが広がる、脳の神経細胞に糸くず状の神経原線維変化が出来るなどの変化が現れることが研究により明らかになっています。
そしてこれを発症すると記憶障害が現れ、ついさっき聞いたことを思い出せなくなり、進行すれば覚えていたはずの記憶が失われていきます。
また、人・場所・時間などが認識出来なくなる見当識障害の症状が現れます。時間や場所の感覚が薄れ、迷子になったり遠くに歩いていこうとしたり、さらに進行すると自分自身や家族のことの記憶がなくなります。
これに伴って身体の機能も低下しますが、進行の度合いには個人差があり、寝たきりになってしまう人もいれば、自立して生活できる人もいます。
認知症かなと思う行動は?
『人の名前が思い出せない・・・』
歳をとるとこのような症状が現れますが、これって認知症を発症しかかっているのでしょうか?
認知症はそのまま放置してしまうと症状が進行してコミュニケーションが取れなくなったり、徘徊行動など危険な状態になってしまう可能性もあります。
現在、認知症の完全な治療法は確立されていませんが、早期に認知症を発見して適切な対策をとれば進行を遅らせることが可能です。
そのために物忘れと認知症の見分け方や認知症の判定方法などを知っておくことはとても重要です。
「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違い(一例)
加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ | |
体験したこと | 一部を忘れる 例)朝ごはんのメニュー | すべてを忘れている 例)朝ごはんを食べたこと自体 |
もの忘れの自覚 | ある | ない |
探し物に対して | (自分で)努力して見つけようとする | 誰かが盗ったなどと、他人のせいにすることがある |
日常生活への支障 | ない | ある |
症状の進行 | 極めて徐々にしか進行しない | 進行する |
さらにこんな場合は要注意!
- 同じことを何度も繰り返し言う
- 食事したことを忘れる
- 感情の起伏が激しくなる
- 外出しても自力で帰宅できない
- 業を完遂せず、やりかけのまま忘れてしまう
- 部屋を散らかす
また、少しでも変だなと思ったら下のチェックシートで当てはまる数を確認してみて下さい。3つ以上当てはまれば早めの対策・対応が必要と認識して下さい。
- 同じことを言ったり聞いたりする。
- 物の名前が出てこなくなった。
- 置き忘れやしまい忘れが目立ってきた。
- 以前はあった関心や興味が失われた。
- だらしなくなった。
- 日課をしなくなった。
- 時間や場所の感覚が不確かになった。
- 慣れた所で道に迷った。
- 財布などを盗まれたという。
- ささいなことで怒りっぽくなった。
- 蛇口、ガス栓の締め忘れ、火の用心ができなくなった。
- 複雑なテレビドラマが理解できない。
- 夜中に急に起きだして騒いだ。
出典:認知症フォーラムより
家族が認知症かも?その場合の対処と対策は?
まずは老化による症状なのか、アルツハイマー病による症状なのかを判断すること。
もの忘れが多いからとスグに認知症と決めてしまうのは早計です。
アルツハイマー病が疑われる場合は、本人に気付かれないように慎重にチェックしてみましょう。普段の会話の中で、当日や明日の予定だったり、冠婚葬祭のこと、大きな事件やニュースのことなどを聞いてみます。
そして気になる場合は早めに医療機関等で相談することが望ましいですが、本人が認めない状態で病院へ行くのは難しいかもしれません。
そのような時は本人に配慮しながら、『将来の為に』という理由をつければスムーズに行く場合があります。『これからもずっと健康でいて欲しいから、脳に良い生活習慣を一緒に聞きに行こう』というニュアンスであれば本人も納得して行動してくれるかもしれません。
ひとりで悩まずに、まずは相談
もし家族に認知症の症状が現れたら・・・
相談できる人がいなければ尚更不安になってしまうことでしょう。
そんな時には認知症の相談窓口で相談しましょう。
●医療機関のもの忘れ外来
公益社団法人 認知症の人と家族の会「全国もの忘れ外来一覧」
●地域包括支援センター
e-65.net(イー・ローゴネット)「認知症・地域支援マップ」
また、各都道府県のホームページから以下の各機関・窓口の情報についても調べることが出来ます。
●認知症疾患医療センター・専門医療期間
●保健福祉事務所
●精神保健福祉センター
●在宅介護支援センター
●若年性認知症支援相談窓口
●家族同士の交流会
●認知症カフェ
今すぐ出来る認知症対策、意外と沢山ありますよ
他人事ではない、40代からやっておくべき認知症予防
認知症は高齢者だけの病気ではなく、65歳未満で認知症を発症する場合もあり、『若年性認知症』と呼ばれています。若年性認知症はアルツハイマー病が多く、特に40代、50代の働き盛りで起こると老年性の認知症よりも進行が早い場合があり、症状も重くなる傾向があります。
また年齢的に仕事では責任ある役職であったり、マイホームや子どもの教育資金などのお金の問題があったり、高齢者とはまた違った現役世代ならではの悩みを抱える場合もあるためサポートも慎重に行う必要があります。
日常生活で出来る認知症対策
知的トレーニング
知的トレーニングはパズルや計算、間違い探しなど、脳を使ったトレーニングです。ゲーム感覚で出来るので家族と一緒に取り組みやすいし、無料で使えるアプリも数多くありますし、スマホで隙間時間に利用するなど、それ自体が負担にならないよう工夫して継続することが大事です。
筋力トレーニング
ある研究によると、週に3回以上の運動を行っている人は、そうでない人と比較すると、認知症発症のリスクが40%~50%も低下するそうです。非常に効果が期待できるものですが、なかなか習慣がない人は難しいかもしれません。
トレーニングといっても、ウォーキングやジョギング以外に太極拳、ヨガ、或いは運動量の少ないスポーツもいいでしょう。楽しみながら出来ることが続けられる秘訣です。プールでのウォーキングなら負荷が少ない割りに効果の高いトレーニングとなります。
ながら運動
同時にふたつの動作をするトレーニングです。認知症になると、このふたつの動作を同時にすることが困難になります。
例えば、足踏みをしながら引き算を繰り返すなど、単に引き算なら難しくても出来るものが、もう一つの動作が加わることでスムーズに出来なくなります。
同時に二つの動作をするトレーニングをすれば、脳の前頭葉の血流がよくなり、これが脳機能低下を予防することに繋がります。
国立長寿医療研究センターが開発したコグニサイズは運動と認知課題(計算やしりとり)を組み合わせた取り組みで、認知症になる前の段階で取り入れることで認知機能の低下を抑制するこをが分かっています。
五感を刺激する
五感(触覚、嗅覚、視覚、味覚、聴覚)を刺激することも認知症の対策として良いとされています。例えばアロマオイルを使って良い香りを嗅ぐことでリラックス出来ますし、これが同時に脳細胞にも刺激を与えることが出来ます。
また、ハンドセラピーといって薬やサプリ、器材や道具、鍼などのツールを使わずに、手だけで施す治療法があります。足つぼマッサージはよく耳にしますが、同様に手のひらにも足の裏と同様に全身を投影する反射区があり、そこを刺激することで脳の活性化が期待できますし、手のひらから伝わるぬくもりが癒しを与えます。さらにアロマを使うアロマハンドセラピーなら同時に複数の五感が刺激され、さらに良い効果が期待できます。
食生活の見直し
基本はバランスのよい食事です。特定の食品に偏ってしまうと、たとえそれが予防効果のあるものでも、結果的に体調に意図しない影響をもたらす恐れも考えられます。
普段の食事でバランスよく摂取したい食品は以下の10種類
①緑黄色野菜を始めとする野菜類
②根菜類
③ナッツ類
④豆類
⑤ベリー
⑥魚
⑦全粒穀物
⑧オリーブオイル
⑨鶏肉
⑩ワイン
そして出来るだけ避けたい食品は以下の5種類です。
①赤身の肉
②チーズ
③バターとマーガリン
④パン菓子などのスイーツ
⑤揚げ物などのファストフード
これは、アメリカのラッシュ大学医療センターの研究でアルツハイマー病の発症が53%低下したという結果が出ているものです。
回想法
回想法は、1960年代にアメリカの精神科医であるロバート・バトラー氏が提唱した心理療法の一種で、認知症予防のプログラムとして実践されています。懐かしい写真や映像などに触れて、昔の経験や記憶を語り合うことで記憶を呼び戻すというものです。
認知症の方は、最近の記憶はすぐに忘れてしまいがちですが、昔の記憶ははっきりと覚えていることが少なくありません。昔のことを思い出してもらい言葉にすることで脳が活性化して心情に変化が起こり、表情も豊かになって言葉もはっきと話せるようになるなど、認知症の進行も緩やかになると考えられています。
臨床試験で効果が確認されたプラズマローゲン
学習や記憶力などの知力を発揮するために必要な栄養素の一種であるプラズマローゲンは加齢と共に減少してしまいますが、このプラズマローゲンを摂取することにより認知機能障害を持つ人の脳機能が改善されることが臨床試験で確認されています。
さらにこのプラズマローゲンは脳機能の改善に加えて学習記憶の改善、認知機能低下の予防に効果が期待されており、高齢者だけでなく幅広い年代の方々に必要な成分であると考えられています。
プラズマローゲンは認知症に対する積極的な対策として今大きく期待されています。